今年最後の日記として、「泣くことー感情を表現すること」について書いてみます。
いつだったかつい先日、NHKの番組で「ワーキングプアー」を取り上げていました。私は、この番組を見るのが今回で2回目ですが、Iさんという35歳の青年が再登場していました。前回は、雑誌を拾って、それを一冊50円で売り一日400円で生きている様子が写されていたのです。その番組での彼の印象的な言葉が、「生まれてこなければよかった」でした。
しかし、今回はちょっと様子が違っていました。彼は、月に10日間ですが、日当7、000円もらえる三鷹市の仕事をしていたのです。一月10日間だけの仕事ですが、彼の生活は一変していました。まず、食堂で定食を食べられるようになりました。大盛りの白米を食べることの喜びを語るIさんのうれしさが画面から伝わってきます。また、2日に一度銭湯にも行っています。
そのような様子を見て、本当によかったと思うと同時に月7万円では、アパート代はいくらなのだろうと心配していたら、高速道路のダンボールハウスが住まいでした。やはり、7万円では、住むところまではお金がまわるはずもありません。
そんなIさんに、アナウンサーは尋ねます。「以前、生まれてこなければよかったと言ってましたが、今はどうですか?」それに対して、Iさんは、「今も基本的には、その思いは変わりません。でも、今は人とつながっている気がします。・・・・・」といって突然腹の底からこみ上げるような声で、「ちょっと待って下さい・・・・。」といって嗚咽と共に涙を流し出したのです。
思わず、私ももらい泣きをしていました。そして、その後の彼の言葉に感動していました。Iさんは、こう言いました。「以前だったら絶対泣かない!今泣けるのは、いろいろな人に助けられて少しだけ人間的な気持ちが生まれてきたからだ。」
人は、あまりにも辛い、悲しい体験を生きると、泣くことをやめるのだと知りました。あまりにも非人間的な「生」は、感情を殺してしまうのだと思い知りました。この日、人が健康であることの意味について改めて考えたのです。