ある研修で、「能力もあるし仕事もよくできる部下に、仕事のミスを指摘すると急に防衛的になり絶対に自分のミスを認めない部下への接し方」についての質問がありました。部下にかぎらず上司にも絶対に自分のミスを認めずに、悪いのは自分以外の人間だと主張する方が確かにいます。
このような人は、話をしている途中で自分の方が悪いと気づいても、そこで素直に自分のミスだと認めない傾向があります。このような人は、自分のミスを認めることは、自分の弱みをみせることであり、負けを認めることになると信じているところがあります。
自分は、必要なことはちゃんと言ったし手を打っていたと言い張り、過剰に相手を責めることで自分のミスではないと主張します。少なくとも不適切な弁解をしがちです。このような部下をもつ上司には、仮にミスを認めたところでこのことで部下をダメだとは思わないし、なんでもないような些細な問題にもかかわらず、どうしてこんなに「反抗」するのだろうとと不思議にさえ思えるでしょう。また、このような上司を持つ部下達は、いつも不当な扱いを受けることになり、嫌な気持ちが残ります。
このような人々と接する時に一番大切なことは、相手が防衛的になる必要がないような状況を作りだすことです。例えば、「相手の顔を立てる」「相手の対応の肯定的な部分を尊重する」などです。
例えば、「この一週間は、私からの指示が多くて報告書をまとめる時間がとれなったのだと思うが、先日頼んでおいた報告書は、後どのくらいでできるだろう」というような接し方が、「相手の顔を立てる」実例です。
顔を立てながら話をしても、防衛的になることがあります。そんな時は、部下の言い分を否定したり非難しないことが一番のポイントです。むしろ、ほめたり、言っていることを肯定的に認めるような評価をします。「なるほど、あなたはきちんとやるべきことをやったのですね。あなたは、なんでもきちんとやろうとするところがあるのは、私もよく知っています。」というように返して下さい。
そして、「あなたの協力が必要です。この問題に関して私とあなたが今からできることは、何なのか考えてもらえないだろうか?」というように、これからやるべきことを相手自身の口から言ってもらうように仕向けるのです。
ほとんど場合、」防衛的になっている人に、こちらの正当性をいくら伝えても相手はさらに防衛的になるだけです。つまり、こちらが正しいことを言えば言うほど事態が悪くなるのです。
だから、思い切って相手の非を責めずに、お互いが問題を解決できるような具体的な方法を相手に考えさせ、相手の口から言わせるのです。さらに、相手が考え出した方法が、これからの問題を解決できるものであればそのアイデアをほめます。時には、相手に「ありがとう」と感謝するのです。
このように接していると、いつか相手も防衛的になることが少なくなってきます。なぜなら、このような対応は、「勝ち負けの関係」ではなく、「相手の顔を立て、相手を尊重することで自分自身を大切にする自他尊重の関係」だからです。
もし、あなたが相手を責めることより、問題解決を重要だと考えるのであれば、ぜひ試してみて下さい。